楽器のドレスコード



だいぶ時間が経ったけれどもTokyo Guitar Show のレポを。

というのもせっかく東京に居るので、毎回こんな楽器ショーは見に行っているのだけれど、今回はいろんな発見がありました。ギブソンが山野楽器から撤退したため開催が危ぶまれたらしいという話も聴いた。実際僕の気になったのはFender関連でした。それ以外でも入り口での抽選でTシャツが当たったので交通費の元はとれたし。

今回の注目アイテムは、Fender VG StratocasterRoland VG-99 です。どちらもVG関連ですね。これらの進歩にビックリしました。簡単にいうとモデリングのシステムがようやく実用的になったかなというところです。

Fender VG Steratocasterは、RolandとFenderの提携によりストラトにVGの簡易版を組み込んだ物です。簡易版といっても、操作性を簡略にする為に機能を絞って搭載しているだけで、音質、レスポンスなどは以前のVGより遥かに進歩しています。Rolandの方によるとVG-99とともに内部のチップが格段に進歩そたらしいです。実際自分で弾いてみたり、Fenderの人のデモ演奏を聴いた感じでは、ほとんどモデリングの音だと気付かないくらいだとおもいます。特にチューニングを替えた時の音質とレスポンスはVG-99の時にも感じましたが格段の進歩だと思います。電池が無くなっても普通のストラトとしてつかえるようです。

残念だった点はまず、ストラト自体の作りの問題。アメリカンスタンダードを元にしているらしいですが、このギターショーでカスタムショップの楽器を試奏しまくった後(笑)では特にネック、フレット周りの仕上げには納得できませんでした。VG部分の為だとはいえかなり値段の張るギターなのだし、気になってしまいました。あとはチューニングのモードの種類が、やはりアメリカ的かなということ。Dモーダルチューニングとかジミーペイジのコピー以外何に使うのか僕には分からないし。できれば半音下げとか、半音下げ+さらに6弦を一音下げ等、現代のポップスやロックで頻出するチューニングに対応してほしかった。まあVG-99だと自分で簡単に設定できるのですが。あとせっかくGKピックアップがあるんだし13ピンアウトも用意してほしかったなぁ。多分ほとんど基盤は増えないしジャックが増えるだけだんだけどな。

VG-99はさすがVGのフラッグシップ製品だけあって凄いです。自分で試奏したのと、矢堀孝一氏のバンドのデモライブで感じたことは、やはり基本的な音質などが良くなっている事につきます。基本的にはいろんなピックアップの音に出来たりチューニングを自動的に替えられたり各弦ごとに歪ませてコードを弾いても濁らなかったりと、画期的なことは10年前からVG-8でできていたんです。ただ音質に関してもう一歩だったのですが、これがほとんど改善されたような気がします。あと今までのVG-8やVG-88はペダルタイプだったのがマイクスタンドに備え付ける感じになったという変更点があります。なのでペダル操作は専用ペダルやMIDIペダルを使う事になります。矢堀孝一氏の演奏でもいろいろやっていたのですがDビームやリボンコントローラーでいろんな事ができるのでこれはこのスタイルでもいいかなという気がします。実はペダル式ではなくなった事で本体自体はかなり軽くなっている(2kg)ことが僕に取っては重要。もしジャズなんかで曲中にパッチを替えたりしないシチュエーションならライブに楽器とこれだけもっていくだけでいろんな事ができます。本体は机かイスを用意しておけばスタンドも持ち運ばなくていいし。

あとはシンセっぽい音もかなり重点的に作り込まれている事です。今まではモデリングはVGでギターシンセはGRでというような済み分けがあったような気がしますが、VG-99でほとんどの音色が出せるのでは無いでしょうか。さらにMIDI信号に変換してシンセを鳴らしているのではなくモデリングなので、トラッキングの遅れもミスもないです。僕の中ではもうこれでピアノやビブラフォンなどの音色やMIDI信号からサンプラーを鳴らす役割以外にGR等ギターシンセの必要性が無くなりました。(つまりシンセのパッドやストリングス、メセニーのようなリード音はVG-99で出した方が良いのです。)

今回は本当にテクノロジーの進歩に驚かされてばかりです。さらに楽器の見た目って何なのか考えさせられました。もう近いうちにギターの見た目に関係なく出したい音色が出せそうな気がします。そうでなくても最近僕は楽器自体に音色を求めなくなって来ています。アンプの方が影響が大きいし、ピックを替えたり弾き方で大きく音は替わってきます。なので楽器に最も必要なのは弾きやすさではないかとも考えています。

でも日本では楽器のドレスコードがあるみたいで・・ジャズはジャズらしい楽器で、またロックはロックらしい楽器でといった概念を、お客やお店やプロデューサーや共演者までが求めてくるんですね。楽器にとんでもない可能性がでて来た時に、この辺に邪魔されて創造性が邪魔されない事を祈ります。っていうか強い意志をもってやりたい事をやります。

投稿日時: 水 - 7 月 11, 2007 at 10:56 午後