アレンジャーのきもち



最近筋の通らない事に、いくつかキレてみたり断固とした態度をとったりしてみた。まあキレ過ぎも良くないし、溜め込むのも体に良くない。すべてはバランスか。

今日はアレンジャーとしてのこだわりを書いてみたい。演奏用に手渡される譜面。その中にどうしても腑に落ちない部分がある時。明らかに間違いがあるとかではなくて、普通に聴いていたら普通の人は9割くらいは聞き流すであろう部分の事。なんか体が納得できなかったり、自分のこだわりとしての部分がNOといっている場所。演奏するシチュエーションによっては、そのまま演奏しなければならないし、場合によっては譜面の作り手とじっくり話し合う必要もあるだろう。

自分がアレンジャーとして絶対にこれはしないな〜という部分でもあるから、とくにこういう場合は「なんだかな〜」となる。アレンジャーは細かいところで無駄にこだわっているのだ。

なにかここに書ける例はないかなと思っていたら、いくつかあった。

ラジオを聞いていたら、ある日本人ジャズ歌手の古い演奏がかかっていた。ビートルズのイエスタデイをアレンジした物だ。歌手はメロディーを結構フェイクしていて、メロディがけっこうすごいところいってるな〜と思っていたら、Aメロのところが8小節になっていた。ご存知20世紀最高の作曲家ポールの書いた最高傑作、イエスタデイ。僕の中では、この曲の最も重要なポイントはAメロの部分の最後のコード進行が(キーはCとして)Am D F C となっていてそこが7小節で終わるところだ。よってこのアレンジは僕の中ではあり得ない(笑)。ちなみに武満徹が編曲した「ギターのための12の歌」の中のイエスタデイは最高です。弾くのは難しいけどね。

僕も一番好きなユーミンのファーストアルバム「ひこうき雲」のタイトルチューン、ひこうき雲のサビの部分の話です。コード進行が(キーはCとして)
C Em Am Em7 Gm7 FMaj7
なんですよ。それで、ある本に載ってた、旦那さん松任谷正隆氏のインタビューで
C Em Am Em7 C7 FMaj7
と、しちゃったアレンジャーがいて最低だ、と言っているくだりがあります。これは僕もよ〜くわかるんですよ。たしかにこんなアレンジする人とは一緒に音楽やりたくないですね。だってここのGm7ってこの曲の一番大事で盛り上がるところじゃないですか。C7は無神経すぎる(笑)。

こんな感じでめちゃくちゃ細かい部分とかで、こだわりどころがあるのですよ。しかも、そこがその人の音楽のよりどころであったり、すべてであったりするわけで。そんな感じで僕もこだわって生きて行きたいです。

アレンジャーって、ホントに適当に音を乗せちゃう場合もあるし、そんな人もいます。でもね、ギルエバンスがあの一音に、どれだけ時間をかけて信念を込めてヴォイシングをしていったかを体で理解している身としては、こだわってしまうんですね〜。だからギルは貧乏だったんですけど。

投稿日時: 木 - 11 月 16, 2006 at 06:53 午前