影響をうけたジャズ・ギターリストのFavorite CD10枚(Old Contents)

CD紹介の第弐段です。僕はギターリスト?なので、ギターリストをフューチャーした音源を紹介したいです。今回はその中でもジャズ・ギターに焦点を絞りたいと思います。しかしなにしろ僕が影響を受けているギターリストなので、典型的なジャズ・ギターって感じではないかもしれませんが。
02/04/2004

Sound of the Summer Running

Sound of Summer Running

Marc Johnson

featuring Guitarist : Bill Frisell

最初は僕の最もお気に入りともいってよい、このCDに参加しているギターリストの紹介です。この音源はビル・エバンストリオの最後のベーシスト、マーク・ジョンソンのリーダー作です。ビル・フリゼール、パット・メセニーの二人のギターリストを加えたカルテットのバンドで、意外にもこの二人のギターリストの初競演盤です。ビル・フリゼールは日本ではジャズ・ギターリスト??といったイメージとなっているみたいですが、本国アメリカではジャズ・ミュージシャンとしてメセニーやジョンスコ以上の評価があると言っても過言ではないでしょう。カントリー、ワールドミュージック、前衛ロックなどなど幅広いスタイルで活躍していて、いつも彼のギターから紡ぎ出されるやさしい音が音楽のイメージを作り上げています。

Excavation

Excavation

Ben Monder

僕はこの人の演奏を見るためにニューヨークに来たといってもいいでしょう。現時点での僕の一番好きなギターリストです。幸い今はニューヨークの至る所で演奏しているため週に一回は見に行っています。彼もいろいろな面を持ったギターリストです。この作品ではオリジナルの音楽をソロ・ギターまたは彼のバンドで演奏しています。クラシック、現代音楽、プログレ、ジャズといった要素が入り交じった、唯一無二の彼の音楽です。自分の作品以外にも彼はサイドマンでの活躍が多いです。テオ・ブラックマン(Vo)との長年の演奏活動からもわかるとおり、歌の伴奏がすばらしい。というよりも和音を弾くということに関して世界最高峰のクオリティーを持っており、いつもいつも参考になります。ニューヨークでは、ちょっとフリーよりのコンテンポラリーなジャズのバンドとなると、たいてい彼が呼ばれるのではないでしょうか。同じように個性の固まりのようなKurt Rosenwinkelが完全にフロントマン、リーダーとして成り立っているのとは、対照的だと思います。

Next Step

The Next Step

Kurt Rosenwinkel

日本で最初この人の演奏をCDで聴いたときは、本当に衝撃的でした。こんなやり方がありなんだ・・と目から鱗状態。アメリカに留学することができて、何度も何度も彼のバンドを見に行きました。今でも見るたびに衝撃を受けます。アメリカでは彼のようなスタイルが流行っているのかなと思っていたんですが、アメリカのコンテンポラリー・ジャズシーンの中でも彼は異端でした(笑)っていうより彼だけのオリジナリティですね、あれは。しかし、彼が積み上げてきたスタイルは、ジャズの王道といったようなところからの影響が大きく、そこからあのスタイルに発展させるプロセスは大変参考になっています。2003年いっぱいで彼はヨーロッパに活動の舞台を移しましたが、さらなる発展を期待しています。

Long Way Home
Long Way Home

Dominique Eade

featuring Guitarist : Mick Goodrick

僕の恩師です。Berklee時代に本当にお世話になり、数限りない影響を受けてきました。使ってる楽器にもよりますが、ニューヨークで演奏していて他のギターリストに声を掛けられるときには、必ずミックに習ってただろう?って言われます。たしかにこの人に習う前と習ったあとでは、僕の演奏も本質的な面で変わったと思います。この人はずっとボストンで演奏、教授活動をしていて、陰ではローカル・レジェンドと呼ばれている地味な人です。凄いところは、彼は有名になった自分の生徒たちの自慢は絶対にしない所なんですが、生徒たちからは本当に慕われています。ゲイリー・バートン時代の後輩にPat Metheny、バークリーやニューイングランド音大などでの生徒にJohn Scofield、Mike Stern、Wolfgang Muthspiel、David Fiuzynski などがいます。ヘッドレスのギターにすべてクラシックスタイルの指弾きといった特殊な人ですが、それはすべてその個性あふれるコードワークのため。このCDは彼が歌の伴奏をしている音源ですが、初めて生で伴奏をしているところを見たとき、彼がなぜこのスタイルを追求してきたかが分かった気がしました。

Live
Live

John Scofield

上に挙げた四人のギターリストは、世界的なコードの達人だと思います。そしてこの人はシングル・ノートでソロをとりつづけて来た人です。最近は(ここ十年くらい)コードワークもすごいことになってきてます。僕が見てきた感じではビル・フリゼールの影響が大きい気がします。実はアメリカに来る前は、僕はこの人があまり好きではありませんでした。好きになりはじめたのは、ミック・グッドリックのレッスンが大きいとおもいます。いろいろ音源を勧められたこともあったし。そしてミックと毎週レッスンでデュオをしていて、それからジョンスコのリズムというかタイム感の深さというか凄さが分かってきた。レガートを含んだフレージングは、ミックの影響が大きいと思います。リズムの取り方は全然違うけどレガートを挟む位置とかは、ジョンスコとメセニーは一緒なんですよ。でその原点はどこかと考えたら、ジム・ホールでもジョン・アバークロンビーでもなくミックだったということですね。

Real Book Stories
Real Book Stories

Wolfgang Muthspiel

この人は僕がバークリー時代に勝手にライバル視していました。ミックの生徒で兄弟子、そしてヴァイオリンをやっていた、クラシックギターを弾く、マイク・スターンの影響がある・・などなど。僕とは全然レベルが違うのですが、いろいろと共通点があったもので。この人はすごい人ですよ。クラシック音楽のバックグラウンドをもっていて、完全にクラシックギターのテクニックをマスターしている、そしてピックをつかったシングルノートでのスタイルでも、ジョン・マフラクリンをしのぐほどのテクニック。完璧じゃないですか、それって・・・。でもそれだけじゃなんとなく上手くいかないもんなんですね。初期のアルバムは、メセニーの影響を受けたフュージョン風の楽曲に、マイクスターンの劣化コピーのようなギター。数年前にはアメリカでの活動をあきらめて国に帰っちゃいましたしね(オーストリア)。何がだめなんだろうと思って、彼についてはかなり研究しました。曲は最近は良くなってきてるし、音色もマイク・スターン臭くなくなってきてる。結局は明らかにメロディックリズムがおかしいんですね、ジャズとしては。 つまりどんなリズムでメロディーを作っていくかってときに、ジャズの影響を受けた音楽になっていないということです。やっぱりヨーロッパの人だからですかね、アメリカの人は一見コンテンポラリーにラインを考えてやっている人でも、そのへんは無意識にちゃんとなってますから。ここで紹介しているCDは最近の物で素晴らしいできですよ。スタンダード集をギター・トリオでやっています。コードを付けながらメロディを弾いたりコードソロを取ったりしているときの、各声部のバランスなんかは絶品です。十年後くらいにまた見てみたいギターリストです。

【追記】それからの自分のレーベルでの作品はかなり好きです。そしてこのトリオ作品にも、長く聴き続け研究して自分のスタイルに大きな影響を与えてもらいました。

Give and Take
Give and Take

Mike Stern

日本でジャズギターを始めた時の恩師である土野裕司氏がマイク・スターンの友人で弟子であるということで、非常に大きな影響を受けまして何度かレッスンをしてもらえる機会がありました。スタイルはともかくとしてミック・グッドリック、メセニー、マイクと3人に共通するのは、ギター馬鹿としか言えないような集中力ですね(笑)。時間があればずっと練習してるみたいだし。日本で矢堀氏が、三大コンテンポラリー・ジャズ・ギターリストとして、マイク、メセニー、ジョンスコを挙げていましたが、僕はマイクはもう少し伝統的で古いスタイルだと思っています。やり方としてはパット・マルティーノに近いかんじですか。何回見ても一緒な演奏とかも。

Give and Take
Discovery Zone

Bruce Gertz 5et

featuring Guitarist :John Abercrmbie

十年前くらいから親指を使った指弾きに変えたみたいですね。ジム・ホールとメセニー以降の間の世代のギターリストです。僕はECMの作品ではメセニーよりも彼のほうが印象が深いです。ミック・グッドリックと親交が深く、よく一緒に演奏もしています。同じようなスタイルなんですが、考え方が全く正反対もような感じですごく興味深いです。ミックは弾いている曲のスケールやモードなんかをすごく数学的にとらえていてすごいバーティカルな演奏のイメージがあるんですが、ジョンはすごく感覚的に音をとらえてメロディーを作っている感じがします。実際二人のセミナーでもそんな会話がありました。

Jazzpunk
Jazzpunk

David Fiuczynski

バークリーで卒業前に習うことが出来ました。日本の一部のコアなファンの間では熱狂的な人気があったギターリストだったんで、最初バークリーで教え始めたと聞いたときは耳を疑いました。アメリカに来て、最初にチケット買って見に行ったのが2001年9月10日に彼のバンドだったので、ものすごく印象に残っています。ともかく彼の音楽からギターからすべてが刺激的です。実際彼のレッスンをうけてみたらジャズ・ギターリストでしたね、考え方とか練習法とかが。毎週レッスンでコルトレーンの研究してました。バンドの曲作りのプロセスとかリハーサルでの進め方とか、その辺もすごく参考になっています。

Sides
Sides

Tim Miller

彼はこれからどんどん名前が出てくると思います。まだ二十代でバークリーの講師をしています。デイブ・リーブマンやジョージ・ガゾーンとの活動もあります。僕は直接彼にギターを習うことはなかったのですが、何度も彼のコンサートを見に行くうちにかなり影響を受けるようになりました。完全にジャズのバンドをやっているのにソリッドボディーのヘッドレス・ギター、すごい軽いタッチでレガート中心の演奏、複雑で難解なのにポップな曲など、今の僕のスタイルは大きく影響を受けています。ギターや機材のセットアップや音作りなんかでは、一番参考になっています。僕がニューヨークでジャズをやっていても、みんな箱ギター。箱じゃないとジャズじゃない見たいな雰囲気がすごくつらい。箱じゃなくてジャズだと認めさせられるのはウェイン・クランツぐらいかな、ニューヨークでは。(マイク・スターンはマイク・スターンってジャンルだから論外)。どんどんティム・ミラーみたいなギターの人がいっぱいメジャーになってきてほしいです。